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よくわかる自動車業界

連載 自動車業界入門 ⑦海外生産

日系自動車メーカーの生産拠点は、北米や欧州、アジア、中南米など世界中に広がっています。現地生産は単独もしくは地元企業との合弁で行われ、そこで作った車両は生産国や周辺地域で販売されます。需要のある場所で生産する「地産地消」という考えに基づくもので、その狙いは現地の市場ニーズに素早く応えることと、為替リスクを減らすことにあります。

2020年に日本の自動車メーカーが海外生産した車両数は約1500万台でした。これは日本国内の生産台数の2倍に迫る水準です。20年はコロナ禍の影響で台数が落ちましたが、19年実績は約1850万台で10年前のほぼ2倍でした。

スズキが新棟を立ち上げたグジャラート工場

海外生産が拡大したきっかけは08年の世界的な金融危機「リーマンショック」です。09年の海外生産は、各社が日本からの輸出に力を入れていたため1千万台ほどにとどまっていました。しかし、急激な円高進行を背景に輸出を見直し、現地生産を重視する戦略に転換したことでどんどん増えました。特に中国でトヨタ自動車、日産自動車、ホンダが大きく増やしました。スズキは4月にインドで新工場を稼働。今後はトヨタとマツダが共同で北米に新工場を立ち上げる計画です。

一方、近年は過剰に増えた生産能力を是正する動きがあります。自動車メーカーは新興国などの中長期的な市場成長を見込んでグローバルな生産体制を構築してきましたが、想定通りに現地販売が拡大しない地域があるため見直すものです。ホンダは英国とトルコの生産拠点を21年に閉鎖するほか、すでに南米や東南アジアの生産拠点の一部を閉鎖・縮小しました。北米と中国に軸足を置く日産は、その他の地域で生産体制のリストラを進めています。しばらく右肩上がりの成長を続けてきた世界の新車市場ですが、2~3年前に停滞期に入ったため、生産体制の最適化に向けた模索が続いています。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)4月27日号より