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よくわかる自動車業界

連載 自動車業界入門 ⑥国内生産

四輪車の国内生産台数は、このところ1千万台弱で推移しています。ピークは〝バブル景気〟の最中だった1990年の1348万台。その後は国内新車市場の低迷や為替の影響を避けるため海外生産を増やした結果、1千万台を切るようになりました。現在、国内市場は年間500万台ほどなので、国内生産の約半分は輸出向けになります。

自動車製造業の製造品出荷額は約70兆円で、全製造業の出荷額等に占める割合は約2割です。自動車はまさに日本経済を支える基幹産業と言えます。

 日系メーカーが国内生産にこだわるのは、日本ならではの「ものづくり」と雇用を守るためです。トヨタ自動車の「トヨタ生産方式(TPS)」に代表される効率的かつ高品質なものづくりは日本の〝お家芸〟です。これを維持、発展させるため国内に置かれる「マザー工場」は非常に大きな役割を持ちます。

日本経済のけん引役を担う自動車生産ですが、新型コロナウイルス感染症の影響で新車市場が低迷したほか調達が難しい部品が発生したことなどによって、20年には国内生産が806万台にとどまり前年から162万台減りました。

コロナ禍の影響は20年後半から落ち着ついてきました。しかし、足元では世界的な半導体不足によって多くの自動車メーカーが生産停止、減産に追い込まれています。

世界的に機が高まる「カーボンニュートラル」の流れが国内生産に方向転換を迫っています。国内電力供給では、東日本大震災以降に原子力発電が大幅に減少した結果、火力発電の比率が高まり温室効果ガスの排出を抑えにくくなりました。自動車生産は大量の電気を使うため、太陽光など環境に優しい電力の供給が比較的多い海外勢と比べ、日本勢は温暖化対策が不利になりがちです。日本自動車工業会は、火力発電への偏重が是正されない場合、輸出車両の競争力が低下して最大100万人の国内雇用に響く恐れがあると試算し、改善を求めています。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)4月26日号より