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自動車業界トピックス

運転支援技術が着実に進化 「レベル2」が高機能化 「ハンズオフ」など限りなくレベル3に近く

レベル3の普及は想定より遅れているが…

自家用車(オーナーカー)向け運転支援技術の開発が加速している。ホンダは、自動運転「レベル3」(特定条件下での自動運転)車両の経験を生かし、手放し状態で走る「ハンズオフ機能」を幅広く展開する方針。高価なLiDAR(ライダー、レーザースキャナー)を使わず「レベル2」(高度な運転支援)の機能を高めた。トヨタ自動車や日産自動車、スバルなども、ハンズオフ機能をすでに実用化し、搭載車種を増やしている。運転責任のやり取りを伴うレベル3の普及が遅れている分、レベル2の高機能化が進みそうだ。

ホンダは、レベル2に相当する安全運転支援技術「ホンダセンシング」を2014年から搭載し始めた。ホンダセンシングより高度な「ホンダセンシング360」は中国を皮切りに展開し、日本でも23年から搭載車両を発売する予定だ。24年以降には、従来のホンダセンシング360にハンズオフ機能などを追加する。30年までには、先進国で販売する全モデルへホンダセンシング360の搭載を目指す。

同社は21年、「レジェンド」でレベル3を世界で初めて実用化した。ホンダで最上位と位置付ける運転支援システム「ホンダセンシングエリート」も進化させる。人工知能(AI)を活用することで自動駐車支援や一般道の運転支援、全車速域で高速道路での運転支援(レベル3に相当)を行う。「50年に交通事故死者ゼロの実現」を目標に、自動運転技術の高度化と普及を同時に進める。

 トヨタは、燃料電池車「MIRAI(ミライ)」やレクサスブランドの高級セダン「LS」で高度な運転支援機能を搭載する。スバルも「アイサイトX」でハンズオフを実現した。現在は、降雪などで白線が認識できない道路でも作動するシステムの開発を急いでいる。日産は19年に投入した「スカイライン」の「プロパイロット2.0」でハンズオフを実現した。主力ミニバン「セレナ」の一部グレードでも採用し、採用車種を広げている。

自動車業界では当初、複数の自動車メーカーが「2020年までにレベル3搭載車を発売する」と宣言したが、現実はレジェンドなど一部にとどまる。レジェンドにしてもわずか100台の限定生産で価格は1100万円(消費税込み)もする。

理由について、自動車メーカーのあるエンジニアは「現実で起きることを想定して発表したのかどうか。レベル3はわれわれメーカーがハンドルを握ることになる。そのインパクトや課題をつぶさに理解していたかについては疑問で、そういう意味では勇み足だった」と話す。

ただ、あくまで運転支援にとどめるなら話は別だ。レベル3との「谷間」は深いが、限りなくレベル3に近づく形で、レベル2の高機能化が今後も進みそうだ。

(織部 泰)

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)12月26日号より